スーパーゼネコン5社(鹿島建設・大林組・清水建設・大成建設・竹中工務店)の大卒初任給は、2021年の24万円から2025年に30万円へ。4年で25%上がった。院卒は32万円。同じ会社でも、5年前に入った人と今年入った人で、出発点が月6万円違う。

同じ会社で時間が経てば、その差は埋まっていくのか。

第一生命経済研究所の集計では、過去5年で年収が伸びた層と止まった層が、年代でくっきり分かれている。本記事は、入社世代で年収がどれだけ違うかを、公的データと第一生命経済研究所の整理を出典つきで並べていく。

自分の年収について考えるとき、要素はひとつではない。「自分の能力と努力で決まっている」という見方に加えて、「入社した時点の採用市場と社内のテーブルにも左右される側面がある」という見方も置けるようになる。読み終えたあとに、自分の年収を考えるときの視野がひとつ広がっていれば、本記事の役割は果たせている。


入社世代で出発点はどれくらい違うのか

スーパーゼネコン5社の大卒初任給の推移は次の通り(出典:日経クロステック「大手ゼネコンの初任給『院卒30万円台』に突入、4社が3年連続アップで横並び」/総合資格navi)。

準大手の長谷工コーポレーションと住宅大手の大和ハウス工業は、スーパーゼネコンを上回る水準を打ち出している(出典:同上)。

5社が横並びで動いた背景は、業界記事で2つ取り上げられている。慢性的な人手不足と、「2024年問題」(時間外労働の上限規制)の本格適用。若手の確保が経営課題として表に出た時期にあたる。

5年前に新卒で入った人の月額初任給は約24万円。同じ会社の今年新卒は約30万円。年額にすると約72万円の差から職業人生が始まる。


5年前と今で、どの年代の年収が伸びたのか

第一生命経済研究所の集計(2024年6月時点・賃金構造基本統計調査の二次分析)では、所定内給与の5年前比の伸び率は、年齢階級でずいぶん違う。

年齢階級 所定内給与の5年前比の伸び率
20〜24歳 +10.3%
25〜29歳 +9.5%
40〜44歳 +0.1%
45〜49歳 +2.1%
50〜54歳 −1.3%

20代の伸びが10%前後で揃う一方、40代はほぼゼロ近辺、50代前半は実額で下がっている。

第一生命経済研究所は、2024年時点で40〜54歳の年齢層を「就職氷河期世代」として整理している(1993〜2004年頃に入社)。同レポートのタイトルは「初任給アップでも世代間格差は残る」「世代間賃金格差は残っている」。世代間で所得の伸び率の差が続いていることを扱っている(出典:第一生命経済研究所 熊野英生)。


第一生命経済研究所による背景の整理

50代前半の所定内給与が伸びていない(むしろ下がっている)背景について、第一生命経済研究所は2つの要因を挙げている(出典:同レポート)。

ひとつは、外の採用市場と社内のテーブルのずれ。新卒の初任給は、人手不足で他社より早く動く。社内の給与テーブルは年齢や役職に沿って決まっていて、外の相場が動いても急には変わらない。ベースアップの配分は若手側に厚くなりがちで、その分、上の世代には届きにくい。

もうひとつは、役職定年制度の手前の調整。多くの大手企業で55歳前後から管理職を外れる仕組みがあり、その手前の50代前半は、ベースアップの恩恵が薄くなる傾向が報告されている。

同レポートでは、氷河期世代は長く同じ会社で働いている人が多く、社内のテーブルの影響を強く受けやすいとまとめている。


世の中は、この事実をどう扱っているか

入社した世代で出発点が違うという事実は、メディアや専門家のあいだで「構造的な問題」として扱われている。一方で、個人レベルでは「自己責任ではないか」「もう手遅れではないか」という声も残っている。

第一生命経済研究所の熊野英生氏は、こうした状況について「自分の価値を再確認する機会を作らなければ、沈没は止まらない」と提言している(出典:読売新聞オンライン「記録的な賃上げの恩恵から取り残される『制度の谷間』の就職氷河期世代」2025年)。


数字を知ったあとに、何が変わるか

世代差を「能力や努力の話」だけに押し込めると、自分を責める方向に働きやすい。同時に、「もう手遅れ」と諦める話でもない。構造を踏まえて、自分の現在地を同じ条件の人と並べて確かめる。そこから動くか動かないかは、本人の判断で決めていい。

本記事は、世代別の数字を並べてみるところまでを担当する。読み解きは読者の文脈にゆだねたい。

PayPulse は、熊野英生氏が提言している「自分の価値を再確認する機会」を、個人が登録不要で使える場所として用意している。同じ年齢・同じ案件規模・同じ担当業務・同じ資格の人と並べると、世代要因の影響が分布の幅として見えてくる。

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